ママの手料理

「君の言う事は俺の家族皆信じてくれると思うし、大丈夫だから。俺を信じて」



誘拐されるとかされないとか、そういう問題ではない。


いっその事このままこの公園で死にたいと思ったけれど、死ぬ前に誰かを信じたくて。


これで何かが上手くいくとかそういう保証もないけれど、家に帰って息絶えた家族と対面する勇気も警察署に今から行く元気も無い私は、


「はい………」


俯き加減のまま、血だらけの手を彼に差し出した。


躊躇せずに私の赤い手を握り締めた彼の手は、とても温かかった。



「じゃ、行こっか。…そうだ、俺は伊藤 大也(いとう だいや)っていうんだけど、君の名前は?」


公園を出て、裸足の私の歩幅に合わせて歩きながら、彼ー大也さんーが尋ねてきた。


「…丸谷、紫苑です」


「紫苑ちゃんかー、可愛い名前だね。親のネーミングセンス抜群だね…って待ってごめん、泣かないで泣かないで!本当にごめんって…。今のは悪かった、あーこっちまで涙出そうだからっ…、」


と、彼は道中で私を泣かせるような発言をしたり、


「あと10分位で家に着くからね。足痛くない?歩ける?…てか何で裸足なの?後、刺されたって事は紫苑ちゃんの家族は殺されたの?あ、これは家で改めて聞くから答えなくていいよ」


歩くのを止めたくなる様な発言をしたり、