ママの手料理

(まさか、)


首の筋肉が疲れてきて、何も見えない暗闇の中でゆっくりと首を地面らしきところにつけた私は、自分の恐ろしい考えにぎょっとした。


(OASIS?…私、OASISに誘拐されたの?保険金目的で?)


まさか、いやそんなことは無いだろう。


今日というmirageが居ない日に限って、ましてや伊織と笑美さんという強い味方が家に残っていたにもかかわらず、普通はそんな事は起きないはずだ。


それに、例え遊びでも伊織や笑美さんはこんな事はやらないはず。


(…じゃあこれは何?夢?)


甘い考えに縋り付きたかったけれど、


(いや、手痛いし…現実だよねこれ…)


どうしてこんな状況でも冷静に考えられているのか分からないけれど、私は以外と落ち着いていた。


多分それは、もしOASISが私を誘拐したとしても、必ずmirageの誰かが助けに来てくれると信じていたからかもしれない。



そのまま、しばらく動かないでー正確には動けないーじっとしていると。


誰かがドアを開ける音がして、私の足に結ばれていた縄を解き始めた。


(え、誰?伊織!?)


「ぁれ(誰)…?」


口にくわえたさるぐつわのようなものが邪魔をして、言葉が発せなくていらいらする。


伊織が助けに来てくれたのだろうか。


せめて相手が話してくれれば、それか私が話せるようになったらいいのに。