ママの手料理

「奥にエレベーターがあるみたいだね。僕と大也と航海は階段から上に上がるから、他の2人はエレベーターに乗って上の階を目指して欲しい。敵は大勢居るから、くれぐれも油断しないように。BB弾は1人につき30個しか入ってないから、使い方には気をつけて」


煙の巻かれた受付の場所を避けるようにしながら奥に進む間、俺らのリーダーは頼もしい指示を飛ばした。


その指示に大人しく従い、俺達は自然と二手に別れた。


「はあ!?階段使うの!?意味分かんないんだけど疲れるじゃーん、ただでさえバイトで体力奪われてるのにおかしすぎる、不公平だ!」


もちろん反発を忘れない俺だったけれど、


「うるせぇな、どうせ上の階で落ち合うんだから関係ねぇだろうが」


エレベーターに向かいながらそう言ういつもの琥珀の台詞に、俺は、


「そうだったね!うん!」


と、光の速さで折れるのだった。



振られても尚、何があっても琥珀の事を愛し続けると決めてから早2日。


彼の言うことには逆らえないし、逆らいたくもない。



「じゃ、上で生きて会おうぜ」


エレベーターが閉まる直前、前髪をかきあげた壱がこちらを向いてにやりと笑ったのが見えた。