ママの手料理

「全くもう、壱も指図しないで少しは落ち着いて。…行くよ、mirage」


メラメラと燃え盛る殺気が感じられる壱とは対照的な湊の落ち着いた声と共に、一列に並んでいた俺達はにやりと笑って足を踏み出した。


(さあ、お遊びの始まりだ)





1階から堂々と中に入った俺達は、OASISである事を示さないと入れないセキュリティーをずんずんと突破して行った。


チリリリリリリリリンッ……


不審者を知らせる警報器が一斉に鳴り、それによって1階に居た受付のOASISの男性2人が立ち上がる。


「すみません、こちら社員カードが無いと入れない事になっておりますが」


「…るせぇな」


隣に立つ琥珀の舌打ちが聞こえ、俺は吹き出しそうになるのを辛うじて堪えた。


受付のフリをしていた彼らも、一列になって歩みを止めない俺達に不信感を抱いた様で。


「何してるんだ、止まりなさい!警察を呼ぶぞ!」


「…いや、ちょっと待て。あの白い髪の男といい、サングラスを掛けた男といい…。こいつら、もしかしてmirageなんじゃ」


「は?でもまだ2時半だろ」



相手の言う“白い髪の男”とは、紛れもなく自分のことである。


(は?老けてるみたいに言わないでよね、これ病気のせいなんですけど!?)


自分の中指が立ちそうになるのを必死で抑える。