絵画を盗む為、そして彼女の為にOASISに攻め込む大まかな計画を立てていた僕達だったけれど、mirageのメンバーのほとんどは、血の繋がった実の家族を良く思ってはいなかった。



捨て子で親の顔も知らない大也と仁は、一家心中を危機一髪で免れた琥珀と家庭が貧しかった銀河と同じく、みらい養護園に預けられた身。


殺人罪で逮捕歴のある父親から逃げ出す為にOASISに加入し、そこから血を吐く思いでmirageに逃げてきた伊織。


そして、感情を無くして敬語が抜けなくなってしまう程の酷い虐待から逃れようと、正当防衛として一家全員を殺害した航海。


mirage全員の過去を、紫苑はきっと把握していないだろう。


僕らmirageは、彼女同様に耐えられない程の大きな怒りと悲しみ、絶望と闘った結果で作られたグループなのだ。


中には実の親の顔を知らない人や家族を憎んでいる人もいるわけで、そんな皆に紫苑が彼女の“家族”をどれだけ大切にしていたか、二度も家族を亡くしてどれほど苦しんだかを説明しても、彼らがピンとくるはずがなくて。


だから、僕はその際に例えを用いた。


『もし、mirageがOASISによって自分以外の全員が殺されたとする。その後すぐmirageみたいな家族に出会えても、またOASISに皆殺されてしまった。…そしたら君はどう思う?悲しいよね?怒るよね?OASISに復讐したくはならない?』


そして、その例は効果抜群だった様で。