おやすみと言われた直後、頭を優しく撫でられた気がして。


その感触が、どうも亡くなったお母さんに撫でられたあの感覚にそっくりで。


(…お母さん、)


そう思った瞬間、私の意識はプツリと切れた。







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「会長、“ニュー”からお電話です」


「ありがとう、“アルファ”」


ここはOASISの本部、最上階。


決められた人しか立ち入れないその場所で、会長と呼ばれたその男は、高級な革張りの肘掛け椅子に深く腰かけたままスマホを耳に当てた。


「状況はどうだ、ニュー」


電話越しから、ニューと呼ばれた男の声が微かに漏れて聞こえてくる。


『ただ今、計画を進行中です。そちらに着き次第、一旦“ガンマ”に見張りをさせる予定です。殺害はもちろん、会長にお願いしたく思っております』


「…そうか、ガンマにな。良い考えだ」


ガンマ、という言葉が届いたのか、ドア付近で直立不動の姿勢を保っていた男が、


「マジ!?よっしゃあ大役じゃん神!」


と、ガッツポーズを決め込んだ。


「殺害は、もちろんこの私が行う。ずっと狙ってきた2兆円がようやく手に入るのだからな。2度も私達の殺害計画をおじゃんにさせられて、私のはらわたは既に煮えくり返っている」


6年前から狙い続け、幸か不幸かそれを回避し続けたあの忌々しい娘。