ママの手料理

｢おーっと…？｣


今初めて気付いたのか、私の服に着いた血を三度見して。


そのまま私の足元も照らし、そして私の顔や腕、手の先までゆっくりと照らした彼は。


｢ちょい待ち、一体何があったの？｣


今までとは違う、本当に真剣な声で尋ねてきた。



(起きたら、家族が死んでました。死体を抱き締めてたら血がつきました)


そんな事、本当にこの人が信じてくれるのだろうか。


先程会ったばかりの初対面の人だからろくに面と向かって話もしていないし、彼の名前も知らない。


もう家族なんて居ないのだからどうなったって構わないはずなのに、謎に警戒心が強まった私はそっと彼の目から視線を外した。


すると。


｢君、お化け屋敷で幽霊役とかやってないよね？てか裸足じゃん、もしかして……もしかして、誘拐されてた！？｣


有り得ない事を聞かれた。


(え、)


私が無表情で首を振ると、


｢そうだよねー。じゃあ、何があったの？｣


ベンチに深く腰掛け、まるで私が話すまで帰らないという様な雰囲気を出しながら、彼は何度目かの質問を投げ掛けた。



｢……家族が、死んじゃって｣


そのオーラを感じて諦めた私は、彼の目を見ずにあっさりと伝えた。