ママの手料理

私を支えてくれた時に背が高いなとは思ったけれど、口調が少し子供っぽいしブランコに乗っていたから、少なくとも大人ではないと思う。


「何って…、考え事だけど」


別に俺の事は気にしなくて良いよ、と、彼に曖昧に誤魔化された。


「家族が心配しているんじゃないんですか?」


そう言いながら、また鼻がツンとして。


「………どうだろうね」


私の隣でふぅっと息を吐いた彼は、おもむろにスマホを取り出して電源を付けた。


その途端、


『11:17』


という時刻の表示と共に、


『不在着信 5件』


『新着メッセージ 38件』


『リーダー:何処に居るの?早く帰っておいで』


『琥珀:さっさと帰って来いよクソ野郎、お前のせいで寝れねぇって嘆いてる奴がいるんだよ』


『航海:今日バイトありませんよね?迷子になったのなら連絡下さい』


何件ものメッセージや電話の記録が表示されていた。


「………、」


それらに既読を付けたり返信する事なく、ただ表示された文面を見続ける彼。


「それ、家族ですか?」


横目でスマホを覗き込んでいる私が、小さな声で尋ねると。


「うん、家族だよー」


スマホの電源をつけたままの彼は、私の方に何の気なしにスマートフォンの光を当てながら答えて。