ママの手料理

しばらくすると、ようやく私の呼吸も落ち着いてきて。


「ありがとう、ございます……」


血のついた手で、頬を伝っていた涙を拭きながらお礼を言うと。


「いいえー。それより、もう11時過ぎてるから早く家に帰らないと親が心配するよ?警察に補導されるよ?」


家出は良くないよ、と、その男の人は私の方を見て笑いかけてきた、気がした。


何せ、暗闇のせいで彼の顔も良く見えない。


きっと、彼も私の姿を上手く捉えられていないのだろう。


「家出じゃ、ありません…」


私は、裸足の足同士を擦り合わせて返事をする。


行く宛がないから、何処かに行く気にもなれなかった。


それに、足の裏が痛い。


血が出ているかもしれない。


「家出じゃないの?じゃあ、反抗期?」


「…違います」


反抗期になんてなった事がないと思う。


高校1年生真っ只中の私だけれど、今は亡き家族の言う事はちゃんと聞いてきたし迷惑も掛けないようにして過ごして来た。


「じゃあ…、何だろ?」


何故か、彼は私の隣で真剣に考え込んでしまった。


「そう言うあなたこそ…、何をしていたんですか?」


話題を変えようと言おうと口を開いたけれど、少し冷めた言い方になってしまって申し訳なくなる。