ママの手料理

ドアを閉める直前、


「……何だこのパスワード、かけてないも同然じゃねぇか…おい待て、パスワード二重なのかよ…おっ、開けたわ感謝するぜOASISの誰かさんよ……」


何かデータを読み込めたのか、ひひっと笑う銀ちゃんの声が聞こえた。



「皆、私の為にやってくれてるんだなぁ」


部屋に辿り着いた私は、ドアを開け放したままベッドの上にゴロンと横になった。


怪盗とはいえ、私がここに来なければ彼らはただ絵画を盗む為だけにOASISに行く予定だった。


けれど訳アリの私が来た事により、彼らは私の復讐の為にもOASISの所に向かうことを決めてくれた。


その為に今、皆がやるべき事をやっている。


(何だか嬉しいなぁ)


こうやって皆が私の為に何かをしてくれている時に私だけ暇になっているのは申し訳ないけれど、それが現実なのだから仕方がない。


(丸谷家も谷川家も、2兆の保険金が掛けられた私と一緒に生活をしていて、楽しかったのかな…)


そう考えてみるものの、思い出すのは丸谷家のお父さんとお母さんの笑い顔、兄弟達の幸せそうな笑い声。


この家に来てから、OASISの誰かに元の携帯番号を知られない為にスマホを変えてしまい、元のスマホのバックアップも取れなかった為、私のスマホの中にある連絡先はこの家の人達とリンさんのものだけだ。