「……7時58分」


翌朝。


結局6時半に目が覚めてしまった私は、7時前から笑美さんと一緒にホットケーキを焼いていた。


この家には私も合わせて9人が生活していて、しかもそのほとんどが男子。


育ち盛りの現役高校生、大也や航海の事を考えると、彼らはきっと最低4,5枚はホットケーキを食べるだろう。


私と笑美は1枚で足りるものの、他の男子達も食欲旺盛だろうから、単純計算でも30枚は焼いておかなければいけない。


フライパン2つを使ってそれなりの大きさのホットケーキを笑美さんと30枚焼いていると、時間は思ったよりも早く進んで。


昨日の湊さんの言いつけ通り、ホットケーキが焼き終わる毎に続々と男子達が起きてきた。



そして、今。


「おはようございます」


顔も洗っていなければ寝癖も直していない、見るからに1分前に起きたばかりの顔の航海がリビングに登場した。


つい先程までお互いに500円を賭けて、


「あいつは絶対起きてこないと思う。俺は寝坊に1票」


「いや、もしも目覚ましをかけてたら話は変わってくる。航海は多分起きてくるよ」


と話していた大也と伊織は彼の姿を見た瞬間に黙り込み、


「……7時58分」


伊織の手に500円を握らせた大也が、悔しそうに負けを呟いた。