ママの手料理

(何これ、早く治まって…!)


そう念じれば念じる程、ポールを掴む力を強くすれば強くする程、先程の光景が頭をよぎる。


あの出来事は夢でも嘘でもなく、現実にあった事なのだと、痛感させられる。


そして、私がこれから先は独りなのだという事も。


家族を失うのは、これが2度目。


もう、独りは嫌なのに。



ドクンッ……


「うっ……」


先程よりも、肺が酸素を求めている。


それと同時に涙まで零れてきて、もう上手く呼吸が出来ない。


「っ、っはぁ……っぅ…、」


(どうしよう、何で息が出来ないの?…このままじゃ、死ぬ、)


そう思いながら、俯いて胸を服の上からぎゅっと掴んだ時。



「君、さっきからどうしたの?大丈夫?」


何処からか、男性の声が聞こえてきた。


締め付けられる胸を抑えながらゆっくり顔を上げると、ブランコに男の人が座っていた。


「っ、やぁ…っ、」


誰も居ないと思っていた公園に人が居たという驚きと、此処が何処か分からない不安と、家族が全員死んだという恐怖と悲しみで、私の目からはまた新たに涙が溢れてくる。


拭っても拭っても、止まらない。


「え、待って待って大丈夫?泣いてるよ?」


そんな私を見て、その男の人は立ち上がってこちらに近付いてきた。