ママの手料理

「何って…犯罪心理学だけど?」


ふーん、と棒読みの返事をした俺は、本題とも言えるたった1つの質問に踏み込んだ。


「じゃあさ、火事を起こす人…放火犯の心理とかって分かったりするの?」


どうぞ、と、彼は俺に黒の見え隠れするタピオカミルクティーを手渡し、自身もお店の材料で勝手に作ったタピオカ抹茶ミルクティーを啜り、少しの間考え始めた。


臨時休業の為の片付けは全く進行していない様子だ。


その間に、俺は待ってましたとばかりにタピオカを4つ連続で吸った。


(甘くて美味しいわーこれ)


いつもなら流れているはずの店内のクラシックのBGMは、今日は流石に聞こえてこない。


そんな中、


「放火犯の心理ねぇー…何だったかな」


伊織は、写真映えしそうな店内の雰囲気に似ても似つかない台詞を呟きながらまたタピオカを吸い込んだ。


「昔の記憶過ぎて忘れちゃったわ。ごめん」


「忘れちゃった?そっかそっか、それは残念」


結局、彼の口からは俺の質問に対する回答は得られなかった。


まあそういう日もあるよな、と、俺は黙って自分の真っ白な髪をかきあげてタピオカミルクティーを勢い良く吸い込み、


「っ!?ゲホッ、ゲボゲホッ………!」


そしてむせた。