ママの手料理

息が上手く吸えなくて咳き込みそうになりながら、私は言葉を紡ぐ。


「それに、何で私だけが生きてるんだろうって思うし、谷川家の時に私が死んでれば私に掛けられた保険金がOASISに行くだけで平和に終わったと思うし、そもそも私が悪いし、あの時シーツを引っ張らなければ両親は生きてただろうし、丸谷家の時も私がクローゼットに隠れなければそこに入った兄妹の誰かは助かっただろうし、」


「…タラレバタラレバ言ってんじゃねーよ、耳にタコが出来るわ」


未だに残り少なくなったキムチ鍋を食べていた壱さんが突然顔を上げ、冷たい言葉を放った。


一息で長台詞を言い切った私は、肩で息をしながら下唇を強く噛んだ。


何故、壱さんは私がこんなに頑張って説明しても私の気持ちを分かってくれないのだろう。


もどかしくて悔しくて、思わず泣きそうになる。


しかし。


「つまり、俺らに荒川次郎とその手下を全員引っくるめて殺して捕まえて来いって事だろ。そんなんお前に言われなくてもやる予定だったわ。お前は24日に黙って家で幼児番組でも見て待ってりゃ良いんだよ」


彼の口から続く言葉に、私は耳を疑った。


彼は、きちんと私が言いたい事を汲み取っていたのだ。


ただ、口が悪いだけで。