ママの手料理

これが夢なら、私は独りぼっちではないのに。



独りに、なりたくない。






ドクンッ……


心臓の鼓動が、やけに大きく身体中に響いた。


『やだぁぁっ!何するのねえやだぁっ…!?……』


『くっ!………』


『ろくじゅうにー……ろくじゅうさんー……、』


兄妹達の最期の声が、死ぬ直前まで数を数え続けていたお母さんの声が、頭の中でこだまする。


(…何、)


ドクンッ……


胸が痛い。


『僕1人殺したぁ』


誰か知らない人の声が、鮮明に思い出される。


あの時、確かに私の家の中に居た人の声が。


ドクンッ…ドクンッ…ドクンッ……


(や、待って…、苦しい何これっ…!?)



今まで感じた事がない程、心臓の鼓動が早い。


しかもそれに比例するように私の呼吸が浅く早くなっていくから、どうしようも出来なくて。


初めて自分の身に起こる現象に戸惑いながらも、私はその苦しさに耐えきれずに目の前の公園に向かって走った。


公園の中にベンチがあったから、一旦座ろうと思って。


けれど、ベンチは思ったより遠くて。


結局、私はベンチよりも近くにあったブランコの遊具の周りを囲んでいるポールを片手で掴み、胸に手を当ててしゃがみ込んでしまった。