ママの手料理

人を殺した事があるなんて、逮捕された事があるのだろうか。


私が夜中に廊下で泣いていたあの日、彼は私を部屋に招き入れてくれた。


もしもあの時、彼が私を殺そうと考えていたら…。


一気に血の気が引いた。



「まあまあ、そうカリカリしなさんな。2人共落ち着いて深呼吸しなされ。…紫苑殿、航海殿は滅多な事…正当防衛でない限り人を傷つけんよ。安心せい」


その時、驚き過ぎて固まっている私の耳に届いたのは、いつの間にかキャラ変を遂げた銀ちゃんの声だった。


(…正当防衛、そっか…なら私は殺されないよね、)


感覚がおかしくなってしまったのか、その言葉だけで少し安心をして肩の力を抜いた私とは裏腹に、


「…ねえ銀河、本気で死んで!?ふざけてんの君!?君のクソみたいな芝居がウザすぎて今すぐ消えたいんだけど此処から!」


仁さんは、人目もはばからず大声で叫び散らかした。


その大声にあからさまに眉をひそめた琥珀が、いつもの様に、


「ふーん、消えちまえよ」


と口を開く。


ここで、いつもなら


『そうやって人の冗談を真に受けるから嫌なんだよね、君が消えてよ』


等と言うはずの彼だけれど、今日は少しだけ…いやかなり反応が異なっていた。