ママの手料理

あんなに優しい湊さんの口から盗むという言葉が飛び出すのが、未だに信じられない。


「当たり前だろ、こっちには殺人好きサイコパスが居るんだからな。迂闊に手は出せねぇよ」


「は、?」


そして最後に口を開いた琥珀の言葉に、私は思わず目をひん剥いた。


そもそも警察が怪盗として犯罪を犯している事から信じ難いのに、何なのだ“殺人サイコパス”とは。


引くのと同時に、普通に自分が殺されないか不安になる。


(私、やばい所に居候してるんだ……)


そう考えたのもつかの間、


「何言ってくれてるんですか琥珀さん、紫苑さん引いてますよ?それに僕、殺した人数は両手両足に収まる数ですが?」


「は!?」


隣から聞こえた耳を疑う言葉に、私は椅子から転げ落ちそうになった。


(誰今殺した人数とか言ったの……航海!?)


「え、…どうしましたか紫苑さん、大丈夫ですよ安心して下さい。僕は大体正当防衛でしか人を傷つけないので」


しかし、私の驚き具合の酷さに気付いているのかいないのか、彼はひょうひょうと言葉を紡いでいく。


「…待って、何言ってんの」


サングラスを掛けている彼からは何の表情も読み取れないけれど、何となく、本当に何となく、彼が人を殺している姿が想像出来た。