ママの手料理

目の前には見知らぬ小さな公園があるだけで、ここが何処かも分からない。


時折強い風が吹き抜け、私の身体を揺らしていく。


精神的にも体力的にも参りかけていた私は、思わず1度立ち止まった。


「はあっ……、」


そっと目をつぶると、浮かび上がるのは家族の見るも無残なあの姿。


家族の事は、大好きなのに。


大好きな彼らがあんな姿になった途端、あの場に居られなくなってしまった自分が嫌で。



ふっと、兄妹達の姿を思い出した。


虚ろな目を見開き、何かに怯えているかの様に口を軽く開け、苦しそうに顔を歪め、小さな手を固く握り締め、うつ伏せになっていた彼ら。


死んでしまった彼らはあの世で両親と一緒に居るのかもしれないけれど、私は。


(独りぼっち………、)


そこまで考えたところで、急に胸が痛くなった気がした。



(……どうしよう、やっぱり私は何も見なかった、皆が殺されてたのなんて見なかった…事にしたい)


思わず、そんな事を考えてしまう。


(これは夢だ、そう、まだ私はクローゼットの中にいて、血の匂いなんか全然しなくて、これは隠れんぼの続きで、だから早く目が覚めたいんだけどな、)


強引にそう言い聞かせた私は、自分のほっぺたを軽くつねってみた。


(あれ、おかしいな?……頬をつねったら、痛いんだけど…)