ママの手料理

｢焦らさなくても焦らしても、いつかはこうなる事くらい明らかだったでしょ。だから、紫苑ちゃんの反応がどんな風になっても良い様に、犯人が分かった2日前位から皆紫苑ちゃんに冷たく接してたんだから｣


対抗する様に冷たく答える仁さんに、私は思わず、え？、と聞き返してしまう。


けれど彼はそれ以上多くを語らず、代わりに、


｢いやあ、鈍感な女の子を騙すのって本当に気分が良いね。そういう顔大好き、ストレス発散になるよ｣


と、最低な台詞を私の鼓膜まで投げつけてきた。


｢僕はそんなあなたを見て気分が悪くなるんですけどね｣


意味の分からないドヤ顔を決め込む彼に向かって、女心を理解している優しい航海が静かに口を開く。


｢…ですが、仁さんの言っている事は全て事実です。犯人についても、今のmirageの話も。…僕達、紫苑さんが取りそうなありとあらゆる反応を考えて、どれを取られても良い様に冷たく接していたんです｣


そしてすぐに、仁さんと違って物分りの良い航海は説明してくれた。



外出していた仁さんと琥珀と伊織、いつもの様に部屋に閉じこもっていた銀ちゃんはともかく、他の人たちはそれぞれが自身の計画通りに動いていたらしい。