ママの手料理

湊さんの言葉が終わるか終わらないかのうちに、私達の様子を端で見ていた笑美さんが青ざめた顔をして震え始めて。


だから、彼は咄嗟に笑美さんを抱き抱えて自分の隣の空いた席に座らせていた。



「…それで、言わなきゃいけない事なんだけど、」


笑美さんの方に視線をずらし、彼女の頭を優しく撫でていた彼は、不意に呟いた。


良く分からないけれど、何となく緊迫した様な雰囲気がリビングを流れる。


伊織は自分の手の甲を見つめながら手を開いたり閉じたりを繰り返していて、琥珀は相変わらず面倒臭そうな顔をしていて。


そして空気を読まない仁さんは、未だに美味しそうな顔でキムチ鍋を頬張っていた。







「…俺達が、日本3代怪盗のうちの1つ、mirageなの」







そして、最終的に今までの流れで1位2位を争う程の信じ難い言葉で沈黙を破ったのは、大也だった。



「……、は?」


自分でも、信じられない程の間抜けな声が出た。


「ごめん、冗談は無しでお願い出来る、?」


直後、咳払いをして恐る恐る尋ねると。



「っ、ほらぁー!だから言ったじゃん、絶対こうなるよって!誰だよ焦らさないで伝えてねって言った奴!」


先程の冷静な声とは裏腹に、彼はドンッと両手を机に叩きつけて私以外の全員を睨み回した。


もちろん、仁さんと同じで余り怖くはない。