それだけで済めば良かったものの、


『うるさいです仁さん!大也さんは帰ってきますから安心して静かにして下さい、ゲーム音が何も聞こえないんです!』


『ゲームなんかしてないで早く寝なさい航海!笑美はもう寝たよ!』


『俺の夜食用に取っておいたマカロン何処行ったんだよ馬鹿野郎、さては昼に伊織が食べやがったなぶち殺してやる』


とまあ、何処で口を開いたらこんなに鮮明に声が聞こえるのか分からないけれど、スピーカーフォンにした瞬間に彼らの声が割れる程の声量で次々と聞こえてきて。


『…チビがお前を迎えに行ったはずだ。何やってんだか知らねえが、この騒ぎを止める為にも20分以内に帰って来い。…それまでにお前が戻らなかったら、』


そこで、鬼よりも怖すぎるドスの効いた電話は唐突に切れてしまって。


「…ねえ、琥珀怒ってたよ…。あれは怒ってたよ、帰らないとやばいよ、?」


私がどぎまぎしながらもう一度口を開くと、彼は少し考える素振りを見せた後にゆっくりと立ち上がった。


「……帰る。琥珀がそう言うんなら、帰る」


どうやら彼には、琥珀の怒りの電話よりも家に帰って来て欲しいという電話内容の方が重要で嬉しかったらしく。


「ごめんね、紫苑ちゃん。……もう大丈夫だから帰ろう」