ママの手料理

「あー、」


何故かカウンターの方から何とも言えない声が聞こえて来て、それと同時に、


「んー、………今日はここまで!ごめんね、ちょっと難しい話題だったかも」


何とも言えない表情を浮かべた伊織が、頭を掻きながらこちらを向いてきた。


「そんな話題にしなければ良かったんだよ、そろそろ学びな情報屋。あと君もだよ紫苑ちゃん。人の恋愛話に興味を持つなんて、底辺の人のやる事だよ」


途端に、仁さんの声が耳に入って来た。


(うるさいなぁ)


「はいはい、…ご馳走様でした!」


私が答えた瞬間にまたしつこく言い始めた仁さんの目の前に空になったカップを置いた私は、じゃあねー、今日もありがとう、と伊織だけに手を振ってパパの手料理を後にした。


「はいは1回!」


「また来てねー」


お店の扉が閉まる直前、全く感情の入れ方が違う2人の声が聞こえた。



それにしても、大也に好きな人が居たなんて。


私は絶対にその女の人の事を知らないだろうけれど、あんなに格好良い彼が好きになるのだから、きっと女の人の方もそれ相応の美人さんなのだろう。


(絶対お似合いなんだろうな……片思いなのかな?)


1度想像し始めると、こういう妄想は止まらないものだった。


にやにやしながら、私はママの手料理の方のお店にマカロンを貰いに入って行った。