そこで、新たに目にしたものは。


「っ、ナナぁっ……!」


押し入れの真下に横向きで横たわる、10才の妹、ナナの姿だった。


胸まであるさらさらだった髪の毛は四方八方を向き、真っ白な洋服は血でほとんど真っ赤な色へと変わってしまっている。


私を除く兄妹達の中で1番頭が切れる彼女の顔は、髪の毛でほとんど隠れていたものの、苦しそうに歪んでいた。


「ナナ、ナナ………!」


彼女は確か、隠れんぼの時に押し入れの中に隠れていた。


それなのに床の上で死んでいるということは、ナナは押し入れから落ちたのだ。


どうやって、何があって落ちたのかは分からないけれど。


「…痛かったよね………」


目の奥が熱くなって、言葉を詰まらせた私はナナの顔に掛かった髪の毛を払った。



しばらくして私は立ち上がり、おぼつかない足取りでリビングへと向かった。


私の記憶が正しければ、ここに居るのは、


「お父さん、お母さんっっ………!」


テーブルの近くで寄り添う様にして息絶えている、両親の姿。


「やだ、やだやだやだああぁっ!」


2人の手は、それぞれの手に触れる様な形で固まっていた。


それはきっと、死ぬ直前でも薄れなかった2人の愛の印。