私の予想は正しかった。


部屋の方ーつまり私の方ーを向く様にして倒れているのは、まだ5才の弟のハズキ。


彼のお気に入りだった黒い帽子は頭から外れ、彼の周りはモモの時と同じ様に血が広がっている。


今までの中で唯一顔がはっきりと見えるハズキの表情は、とにかく何かに怯えているかの様に口を開け、目を見開いていた。


その目は虚ろで、何も捉えていない。


私は先程、そんな彼の目を見たから誰かに見られていると勘違いをしたのだ。


「ハズキ、」


寒いのにわざわざ隠れ場所を外に選び、そして死んだ彼はどんな思いだったのだろう。


目が開いているという事は、相当な恐怖が彼を襲ったのだろうか。


「っ、……」


吐き気を何とか堪えながら、私は彼の目をそっと閉じた。


外気に晒されていた彼の身体は、モモやユウトよりも冷たくて。



「はぁっ、………」


私の家族のうち、3人が死んでいる。


あの時突然家に侵入してきた人が、この子達を殺したのだろうか。


人が死んだこの環境の中で冷静に考えられている私は、おかしくなってしまったのかもしれない。


ハズキの血で固まった髪の毛をそっと撫でた私は、大きく息をついてまた部屋の中に入っていった。