ずっと、小さい頃から親父に言われ続けたこと。

_____好きになった人が困っていたら必ず助けるんだ。


そんな当たり前のことは、分かってると俺が言うと親父は、俺の頭をぐりぐりと撫でながら…。



____お前のファム・ファタールが見つかるから…。


と言うんだ。


何それ…?
その問いには、親父は曖昧に笑って答えなかった。


その内、親父は持病に倒れ亡くなった。



それから、俺はあまり感情が面に出るタイプじゃなくなった。
へらへととその場をやり過ごして、生きるようになった…。

でも、いつの間にか、それが災いしてか「天然人たらし」とか言われるようになって…。


正直、どうでも良かったけれど…あの日出逢った彼女には、そういう自分を見せたくなかった。


約束を、果たしたい…。
俺はそう、決意する。


自分にとっての、そのファム・ファタールとかいうやつを見極めるために。


まだ、その言葉の意味は分からないけれど…。


もしも、彼女が本当に困っていて…俺を必要としてくれるならば…。


俺はそれに真摯に応えたい…。


そう、思ったんだ。