そよそよと、すっかり秋の温度に変わった秋の風が、全身を吹き抜けていく。


私は今…久しぶりに、あの…初めてじんくんと出逢った場所に来ていた。

何故かは分からなかったけど、そうすることで何かをきちんと掴める気がして…。

じんくんからもらった、初めての温もりが胸に染みた、あの瞬間のことを未だ鮮明に覚えてはいるけれど…それをもう一度確かめたくて…その場に座り込んだ。


「じんくん…」

「うん。なぁに?」


独りごちたはずの言葉に、即効で返事が返って来て、私ははっとした。


「じん、くん?」

「ん。そうだよ」

「なんでここに?」

「んー?子猫を探しに?」


突然現れたじんくんに、ささやかな期待。
けれども、それはすぐに打ち砕かれた。

「まだ…探してたんだ…?あの子猫…?」

悲しみで震えてしまいそうな声。
それをなんとか押さえ込んで、私はじんくんに笑い掛ける。

すると、じんくんは小首を傾げた状態で、何かを思案した様子。

そして、ちょっとしてからにっこりと陽だまりの笑顔で私を指差した。


「そ。静紅ちゃんを探しに、ね」


私はその意味がわからなかった。
でも、頭をガツン!と殴られた気がした。