ある日。
じんくんとの約束を叶えるべく、お弁当を作って待ち合わせ場所のベンチに座り込んでいると、どこから飛んできたのかフリスビーが転がってきた。

ころん、と足元で止まったそれを拾い上げて、顔を上げると…そこには前に私に告白してきた進藤くんが立っていて。


なんとなく、気まずくなって蚊の鳴くような小さな声で、


「あの…はい、これ、」


と、手渡そうとしたら、その手をぎゅうっと強く握り締められた。


「痛っ」

「神咲さん……ちょっと顔がいいからって、調子に乗るなよ」

「や、止めて」

「折角、ちょっとは可愛くなったなーと思って近寄ってやったのに……お前は全然変わらねーよ。このブス静紅」

「……っ!」


そう言われて、あの時の恐怖がフラッシュバックする。
告白を受けた時ほとんど顔なんて見ていなかったから、分からなかったけど、その、進藤くんという人は……あの幼い頃私を虐めて来た敬人(のりと)くんの面影がありありと残っていて……今は少し爽やかな感じはあるけれど、全然変わらなかった…。