そこで、また警戒を解くべく、やんわりと微笑んだ。
いつも見てた、というニュアンスも少々詰め込んで。


「静紅ちゃん、いつもキャンパス内で困った顔してたから、結構前から気になってたんだよねー…」

すると、大樹たちの視線が、自然と彼女に集中する。
それが、なんとなく面白くないけれど、ここでいちいちムカついてたら先が思いやられるから、諦めた。


さっきよりももっと顔を赤くするけれど、彼女の顔は強ばって固くなってしまう。


「そうかー…静紅サマ…あーいや、神咲さんは個人行動が似合ってるとは思ってたけど…困ってたんだ?」

大樹の問いに、困り果てて声が出なくなってしまった彼女。
これじゃよって集って虐めてるみたいじゃないか…。



「えっと……」

下向き加減で言葉を濁している彼女へと、助け舟を出すつもりで、俺はそっと手を差し伸べると、そのまま彼女の頭をぽんぽんと撫でた。


「……っ?」

「いいんだよ?…無理しなくても」


その手に、物凄く…泣きたいくらいの安堵を見せた、彼女。
あの日、子猫がくれた温もりと変わらない…温度。
縋られた瞳に、柄にもなくドキン、と胸が跳ねた。


「あ、ありがとう…」

「ん。じゃあ、今日からよろしくね?静紅ちゃん」


照れ臭そうに微笑む彼女を見つめて満足する。
そうして、偶然と言う必然。


落ち葉がくれたチャンス…。

俺は……彼女ととの、距離を縮められる幸運をもぎ取る機会を与えられた………。



…それは、謎を解くための、物凄い前進……だと思った……。