それは、運命のような出逢いだった。


「くしゅんっ」


確かに女の子の声でくしゃみを聞いたはずなのに。
その声が、何処かで聞いたことがあるものだったから、すぐに敷地内の草むら…というか木々のある方へ向かうと、困っている小さな生き物を見つけた。


子猫…?

なんでこんな所に?

そう思って、親猫を探すけどどこにもいない。


ふるふると震えている、その華奢な姿に思わず抱き上げると、ささやかな抵抗をされる。
けれど、それさえも愛しさに変わっていった。



「お前、迷子?」

「にゃぁん」


その鳴き声が堪らなく可愛くて。


「かーわい。よしよし」

力を抜いてなるべく優しく、その毛並みに沿うように撫でた。


あまりにも可愛かったから、家に連れて帰りたかったけれど、まだ午後の授業が残っていて…俺は仕方なく、授業が終わったらすぐに迎えに来ようと思って、地面にその子猫を降ろした。


じっと見つめられる純粋な瞳に、ふと誰かが浮かんだ気がしたけど、その時はそれが誰かなんてちゃんと思い出す時間がなくて、後ろ髪を引かれる思いでその場を去ることになった。


そしてその後、悲しいことに何度そこに行っても、二度とその子猫に会う事はなかった。


そんな、不思議で運命のような出逢い。


きっとあれは、神様がくれた、俺へのチャンスだったのかもしれない…。