課長の所に呼ばれて、話している澤城くんの様子が心配で、チラチラと様子を伺ってると


「石原さん、ちょっと。」


と課長から声が掛かった。はい、と返事して、私が課長のデスクに伺うと 


「今、本人には話したが、今回の2人のチェンジは、部長と向こうの課長と私の3人で決めたことだ。新人の部配属は人事部の決定事項で、動かすことは出来ないが、部内での配属は、最終的には部長判断だ。このままでも十分2人とも戦力になると、我々は思っているが、逆の方が、ひょっとしたら澤城くんと水野の能力がより発揮できる可能性があるというのが、我々の一致した意見だ。せっかく慣れたところで、2人には気の毒ではあるが、我々の2人への期待値は、それだけ高いと言うことだ。」


そうなんだ・・・やっぱり凄いんだな、澤城くんは。でも、私はなんで呼ばれたんだろう?


「とりあえず、1ヶ月間は、こちらの所属で頑張ってもらう。最終的に、このままになるか、元に戻るかはこのひと月の2人の様子次第ということになる。そこで石原さん。」


「はい。」


「君に彼の教育係を務めてもらいたい。」


その課長の言葉に


「わ、私ですか?」


と動揺を露わにしてしまう私。だって私は、いきなり自分のミスを入社早々の彼に指摘されてしまったような落ちこぼれ社員。そんな私がよりにもよって教育係なんて・・・。


絶対に無理無理無理。慌てて辞退しようとしると


「君達は中学のクラスメイトだそうじゃないか。コミュ障の彼にとっては、顔見知りの君が面倒見てくれるのが、一番いいと思うんだが。」


「で、でも・・・。」


「先輩、よろしくお願いします。」


戸惑う私に、わざとらしく敬語でそう言うと、頭を下げる澤城くん。絶対、この子、心の中で笑ってる・・・。


結局、上司の業務命令に従う以外の選択肢は、私にあるはずがなかった・・・。