「課長と千尋さん、怪しいと思います。」


あの夜、和美ちゃんは思い詰めたような顔で、私にそう言った。


「怪しいって・・・?」


私が意味がわからないと言わんばかりに聞き返すと


「忘年会のあとの二次会の途中であの2人、消えたんです。」


「えっ?」


「カラオケボックスで、もう終電もないから、オールだねって感じで始まったんですけど、本当に2人ともいつの間にかいなかったんです。一緒にいなくなったって感じじゃなかったですけど・・・。」


「でも、それは途中で、タクシーとかで帰ったんじゃ。」


「だったら、なんで黙って帰ったんですか?それに・・・あの2人、今日も会ってます。」


その和美ちゃんの言葉に、私は言葉を失う。


「昼間、コソコソ約束してるの、偶然聞いちゃって。それまでは私の思い過ごしかなっとも思ってたんです・・・。もっと早く言えばよかったんですけど・・・すみません。」


と頭を下げる和美ちゃんに


「ううん、和美ちゃんが謝ることじゃないから・・・。」


と言ったけど、表情がこわばってくるのを、どうすることも出来なかった。


和美ちゃんにお礼を言って、別れた私は、小笠原さんと千尋に電話を掛けてみたけど、2人とも出ることはなく、留守電になるばかり。


(ウソでしょ・・・。)


立ち尽くす私。