お昼は、有名なうどん屋さんがあるということで、そこに立ち寄る。ここは私に出させて下さいと言うと、小笠原さんは


「じゃ、遠慮なく。ごちそうさま。」


と笑顔。そしてまた車上の人に。


車内の雰囲気は明るい。小笠原さんは、本当にいろんなことを知っていて、私を飽きさせることがない。私が思わず、感心してしまうと


「営業って、人の気を引いて、ナンボの世界だからな。一種の職業病だよ。」


と苦笑い。そんな彼の言葉に私もつられて笑ってしまう。


そうこうしているうちに、周囲は段々と山の景色に。赤に黄色に色付いた眺めに、私が目を奪われていると


「この先に展望所があるから、入ろう。」


「はい。」


小笠原さんの声に、頷いた。駐車場に入り、クルマから降り立った私達の前に広がる美しい景色。


「きれい・・・。」


私は思わず、そう呟いてしまう。秋の山の空気はヒンヤリと、やや肌寒く、でもその空気は澄んで、心地よく私の身体を包んでくれる。


「いい眺めだ。」


「はい。」


「石原と見ていると余計にきれいに見える。」


「小笠原さん・・・。」


いきなりそんなことを言われて、私は恥ずかしくなって来ちゃうよ。


「もう少し走ると、美味い肉を食わせてくれる店がある。そこで、少し早いけど夕飯にしよう。その後、川べりのライトアップがきれいな所があるから、そこまで足を伸ばしたいんだけど、大丈夫か?」


「はい、よろしくお願いします。」


「よし、じゃ行こう。」


私達は再び、クルマに乗り込んだ。