架くんの父は、木野馨さん。母は、桜城弥生さん。子である架くんは――

「……やっぱり、俺は人間でしかないんだね?」

「………」

私は肯定せず、架くんを見つめる。

やがて架くんの視線は、差し出された手に向いた。

架くんが一度立ち上がり、私の前に片膝をついた。

「承知致しました」

「! あ、ありが――

「ただし、憶えておいてほしいことがある」

「……なに?」

「俺たちが護るのは、主家の方々であって主家の法理ではない。そして、俺が頭を垂れたのは真紅ちゃん――あなただけだ。俺が継ぐ桜城がお護りするのは、影小路真紅、あなたであることを忘れないでほしい」

家に仕えるのではなく、人に仕える。

架くんは、そう宣言した。

「―――うん」