そういえば、と思い出す。 白ちゃんが、以前は架くんのことを『十字架の』と呼んでいたと言っていた。 架くんの名づけの由来は知らないが――とも言っていたけど、的を射ていたのかもしれない。 「あのさ……」 「なんだ?」 「こういうときって……普通泣くものなのかな。それとも怒るべき?」 「……お前の、したいようにすればいい」 「…………そっか」 架くんの爪先が動いて、その身を反転させた。 赤らんだ目で、唇は微笑みの形。 「兄貴。……俺の父さんのこと、教えて」