「! 弥生っ」
「誠、話させて」
弥生さんの言葉が継がれるのを止めようとした誠さんを制して、弥生さんは架くんを見続ける。
架くんは一度瞬きをしただけで、何も言わなかった。
「誠とはお互い、恋愛感情のない許嫁だったわ。誠は留学先で美愛に出逢って、私は同級生だった馨と付き合うようになっていたの。許嫁を解消する準備をしている間に、黎が生まれた。
そしてわたしが架を授かった直後、馨は急な病気で亡くなってしまった……。そのまま、美愛が誠の奥さんになって、わたしは桜城家とは関係のないところで架を育てるつもりだった。
……でも、わたしの精神はそこまで強くなかった。心が弱って、お腹の中の架の命が危ない状態まで、身体まで弱ってしまったの。美愛と誠がわたしの心配をしてくれて、わたしが誠の妻になって、架を当主の二男として育てて行くことになった。
……今まで黙ってて、ごめんなさい。謝ってゆるされるものでもないと、わかっているわ……」



