「――はい」
「ご迷惑をおかけして、申し訳ありません」
黎が肯き私が謝ると、誠さんは「なに」と軽く首を横に振った。
「子どもはいつまでたっても子どもだ。可愛いことに変わりはない。その子が選んだ相手も、大事だよ」
瞼をおろして優しく語る誠さん。
そして隣の美愛さんの、穏やかな表情。
そして、更にその隣の弥生さんは唇を引き結んでいた――と、思ったら。
「――誠、美愛。わたしも決めたわ」
「やよい?」
「どうした」
誠さんと美愛さんが不思議そうに弥生さんを見遣ると、弥生さんは正座したまま手をついて方向を変え、架くんの方を見た。
「? 母さん?」
弥生さんの突然の行動に架くんがきょとんとした。
「架……今まで黙っていたことで、知っているのは誠と美愛くらいの話よ。――あなたの父親は、誠じゃないの。木野馨(きの かおる)。わたしの恋人よ」



