「真紅……ごめんな」

「え? なにが?」

「いや……せっかくだったのに、こんなことになって……」

「いやあ、なんか慣れて来た。こういういきなりなこと。……それでなんだけど、私、黎と付き合ってるって言っていいの、かな?」

弥生さんは、私を黎の彼女と断定して連れてきたようだ。

けど、私の立場上簡単に話していいことでもない。

黎の右手が、私の左手を包んだ。

「当り前」

「……うん」

どうやら、このだだっ広い屋敷に入るよりほかはないようだ。

ここは鬼人の拠点。……陰陽師見習いである私には少し注意が必要な場所だ。

えーと……私の周り、一ミリくらいかな? に、結界を張って……。桜城のおうちの空気を乱さないようにしなくちゃ。

霊力の波動がある程度強いらしい私は、近づいただけで滅してしまう妖異もあるそうだ。

鬼人の家の敷地内で、そして恋人の実家で、まさかそんなことをするわけにはいかない。

桜城一族は、妖異に寄ってはいなく、陰陽師の配下でもあるそうだけど。

私が何をしているのか、黎はわかっているようだ。黙って待ってくれた。

「誠! 美愛! 早く来てちょうだいっ」

弥生さんが先を行って、それに私と黎も続いた。