「……やってしまった………」

ひとしきり、黎に抱き付いて泣きまくった私は、正気を取り戻してから凹んでいた。

椅子に座った私の前に、黎が立っている。

「なあ、お前たちが誰も頼れないってのは澪に聞いてわかったんだけど、どういう理屈で頼っちゃ駄目なんだ?」

「どういう理屈って……」

理屈ならたくさんある。

陰陽師としての縛りとか、契約とか。

返事に困った私の手を、膝を折った黎の手が包む。

じっと見て来る眼差し。私は、真剣に答えを探す。

「えと、依頼内容は絶対秘密だから、他の人――自分の家族にも、そのことを欠片でも悟られちゃ駄目で、だから言えない。どんなことを知っても、誰にも話しちゃいけない。どんな結果になっても、哀しいことだったとしても、それも依頼に含まれていること。

だから、誰も頼ってはいけない。――総てを引き受ける覚悟で、私は影小路に入る道を選んだ。辛い気持ちを、誰かに寄りかかって解消することは出来ない。……そんな感じかな?」

私が紅緒様と白ちゃん、黒ちゃんから教わったことを話すと、黎は「ならさ」と返して来た。