陽華の吸血鬼➁【一人称修正ver.】【完】

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『真紅』

私は自分を呼んだ声が、一瞬誰のものかわからなかった。

辺りを見回すと、真っ暗な中に光を纏ったように浮かんだ姿があった。

『ご当主様っ!』

纏った衣が、遙か以前のもの。

私の知る、最初の主。

駆け寄ると、彼女はすっと右手を前に出して、近づくなというような動作をした。

その行動に、私は足を停めた。

『真紅、ごめんね』

始祖当主の姿で、その声は、言葉は海雨のものだった。

戦慄が走る。

まさか――二人が同化してしまったのか?

今、私は術式をもって海雨の内部に這入(はい)りこんでいる。

海雨にはりついている妖異の残滓を消し去るために。

いわば、今、私は海雨の精神体内に居ることになる。

『海雨? ……ご当主、さま?』