陽華の吸血鬼➁【一人称修正ver.】【完】


「でも――海雨ちゃん、見鬼でもないし、普通の人、ですよね?」

澪さんは、私と黒ちゃんを交互に見る。

私の、自分の腕を摑む手に力がこもった。

「ご当主様は、普通の人になったんです」

黒ちゃんが目を細める。

「なった? 真紅。俺や、ほかの影小路の人間も、これ以上は知らない。お前たち始祖の転生があまりに頑なに口を閉ざすから、始祖の転生とは何者なのか、どうして転生を繰り返すのか――。……話してもらえないか? 今の海雨を助ける策も講じられるかもしれない」

海雨を助ける。その言葉に、私の心は動いた。

私にとって海雨は大事に護って来たお姫様だけど、それを思い出すより前から、大事な大切な、親友だった。

「……始祖たちは、禁忌を犯したんです」

私は、ずっとうつむけていた顔をあげた。

「禁忌?」

そこで初めて、黎の声を聞いた。

少しだけ頭を上下させる。

「泰山府君祭(たいざんふくんさい)を行ったんです」