「真紅、澪、黎」
今まで満ちていた緊張感とは打って変わって落ち着いた声。
呼びかけたのは黒ちゃんだった。
真剣な眼差しで、海雨の両親を見遣る。
「うちの者たちがお騒がせしてすみません。みんな焦ってしまっているので、少し落ち着かせてきます。必ずまた、戻らせます」
有無を言わせぬ黒ちゃんの口調に圧倒されてしまい、誰も逆らわずに、海雨の両親を置いてそこを離れた。
いつか、再会した黎と話した中庭へ、黒ちゃんに連れられて来た。
「真紅、大丈夫か?」
「……うん」
黒ちゃんに問われて、右手で左手の肘あたりをおさえた。
海雨の命が、今一秒削られている。
その場に澪さんが居合わせるなんて最悪だ。
「真紅。お前、俺たちに何を隠してる?」



