陽華の吸血鬼➁【一人称修正ver.】【完】


「真紅、澪、黎」

今まで満ちていた緊張感とは打って変わって落ち着いた声。

呼びかけたのは黒ちゃんだった。

真剣な眼差しで、海雨の両親を見遣る。

「うちの者たちがお騒がせしてすみません。みんな焦ってしまっているので、少し落ち着かせてきます。必ずまた、戻らせます」

有無を言わせぬ黒ちゃんの口調に圧倒されてしまい、誰も逆らわずに、海雨の両親を置いてそこを離れた。

いつか、再会した黎と話した中庭へ、黒ちゃんに連れられて来た。

「真紅、大丈夫か?」

「……うん」

黒ちゃんに問われて、右手で左手の肘あたりをおさえた。

海雨の命が、今一秒削られている。

その場に澪さんが居合わせるなんて最悪だ。

「真紅。お前、俺たちに何を隠してる?」