「……あ?」

胡乱に見上げると、ふと黒が柔らかい笑みを見せた。

「俺が居るのは白のとこだけだ。白にいらねえって言われても居るからよ」

「………」

……視線が俯く。

真実(まこと)は女性であっても、男としてしか生きることの出来ない自分。

その理由がないと、生まれて来られなかった自分。

母が、未来と引き換えに遺したこの命。

御門流が当主を務めるより難題な、この命の生き方。

父様の、母様の死の上に立って生きる。

黒藤が、何気ない風に呟いた。

「俺なー、白がいなきゃダメなんだよ」

「だから、そういうこと言うからお前は――

「白が傍にいねえと、呼吸(いき)が出来ねえんだ」