影はその現象に驚いたのか、身を引くような動作をした。

「残念ながら」

パサリと扇を開く。

「五行(ごぎょう)に準ずる攻撃は受け付けません。『過去の私たち』が、この魂にそう刻んでしまったので」

無表情を心掛け、淡々と告げる。

五行――木火土金水(もっかどごんすい)が生みだす攻撃は効かない。

先ほど影が私に向けたのは、風を刃のようにしたものだ。

抗う術がない。そう感じたのか、影は足掻くことを止めた。

《……違うんだ》

長い沈黙のあと、影は声を押し出した。