「……黒は、過去世を信じるか?」
「否定はしねーが、憶えていたいもんでもねえな。俺は自分の記憶だけでも持て余してる。白は?」
「……記憶はない、が……」
「ん?」
「俺もなんとなく、なんだが……いつか思い出すんじゃないかって、気がしてる」
「………」
俺にあるのは、月御門白桜の意識と記憶だけだ。
だが、自分の知らない――『まだ知らない自分』は、この身体のどこかにいるのではないかという気がする。
これが陰陽師の勘なのか、人間としての感覚なのかは、陰陽師でない時間のなかった俺には判別がつきかねた。
メニュー
メニュー
この作品の感想を3つまで選択できます。
設定されていません
読み込み中…