「……え?」
「確かに、わたくしはいわばお前の師です。お前が妖異に喰われないように育てるとも決めました。ですが、わたくしの許を離れるタイミングまでわたくしが決めていいのですか?」
「―――」
「お前はお前の生(せい)を生きなさい。わたくしは、あとは総て姉様と黒藤のために生きると決めました。家の為なんかに生きてやりません。お前がわたくしの弟子であることを辞める機は、お前が決めなさい」
「………」
陰陽師として育ててくれた紅緒様のもとを、……離れる?
紅緒様は、あとはずっとママと一緒だ。
それは……私がこの家を離れることも含められて?
急に背筋の冷える想像をした私に気づいたのか、紅姫がママの姿のままで胸に頭をこすりつけてきた。
「紅緒、あまりいじめちゃダメよ」