「真紅? どうし――

「瞳! 銀色のまんまっ」

廊下の隅に引きずり込んで、小さな声で叫ぶ。

黎は「あ」と声をあげた。

「カラコン入れてないでしょ。それでここまで来ちゃったの?」

「あー、忘れてた。ずっと家にいたから」

黎の瞳は、純粋な吸血鬼のお母様譲りで、両方とも銀色をしている。

普段は、悪目立ちするから、と黒いカラコンを入れて隠している。

「危ないよ。ふつーの日本人にはない色なんだから」

「ん。助かった。ありがとな」

と、軽く身を屈めてキスをしてきた。

予想外の行動に真赤になる私を横目に、黎は満足げだった。