陽華の吸血鬼➁【一人称修正ver.】【完】


「真紅ちゃん、よくこんなとこ気づいたね。なんかちょっと暗いし、私近づいたこともなかったよ」

校庭の隅の小さな木立(こだち)。

樹の色がそのままの百葉箱の社。

それを前にして、百合緋ちゃんは物珍し気に眺めている。

「色んな香りが、ここから漂ってくるんだ。最初は優しい感じだったんだけど……」

そっと、社に手をかざす。

白ちゃんが言うに、地神が祀られている社でありながら、その外観は学校によくある気温観測用の百葉箱と変わらない。

それにも意味があるのだろうか。

「……ねえ真紅ちゃん、ちょっと訊いてもいいかな?」

ふと百合緋ちゃんが、じっと社を見つめる私に言って来た。

「うん?」

手を下ろして応じると、百合緋ちゃんは何度も視線を彷徨(さまよ)わせてから口を開いた。