【短】愛を語るよりも早く、その口唇を味わいたい。

「……いますよ、好きな人」


少し前に教えてもらった、アップルレッドの薄いグロスを塗った口唇が、そう静かに告げた。


俺は、自分で思っていた以上に落ち込む。


「…あ、そうなんだ…?」


そいつは、誰?

とは聞けずに俯く。
だって、怖いじゃないか。


自分じゃない他の男の名前を彼女から聞くなんて。

それこそ死の宣告だ。


足を動かすことも出来ない。
今日はここで別れた方がいいのかも。

そうして俯いたままの俺。
すると、ふわり…と手首を掴まれて、少しだけ彼女の方に引っ張られる。


「え…?」


俺は、その行為の意味が分からず、瞳をぱちぱちと動かす。