ようこそ異世界レストランへ~食材召喚スキルで竜騎士とモフモフ手懐けます~

やっと追いついたミーナは、肩を大きく上下させている。

振り切れそうなほどに速く打ち鳴らされている鼓動は、今ばかりはときめきというより、全力疾走したためという意味合いが強い。

ハンドバッグを拾った彼女は、息を弾ませたまま、ライアスにお礼を言う。


「ありがとうございます。ぼんやりしていたらバッグを盗られてしまって……助かりました。この道を歩いていたということは、これからお店に来てくれるんですか?」


レストラン・ルーブルは、この通り沿いにある。

今日は珍しく単独行動の彼に、そのように問いかけたら、「いや」と淡白な声で否定された。


「もう食い終わったところだ。他の三人はまだ店内にいる」


大食漢なライアスは食べるスピードも速いが、いつもなら他の三人が食べ終わるのを待って一緒に退店する。

今日は先にひとりで店を出た理由はなんだろうとミーナが首を傾げたら、彼は詳しい話を聞かせてくれた。


夜間から半日ほどの警備をしたライアスたちは、二時間ほど前に別の班の竜騎士たちと任務を交代したそうだ。

その竜騎士は共に大ダコと戦った者たちで、『これからレストランに食いにいくんだろ?この前のタコ焼きうまかったよな。また届けてくれよ。代金は払うから』とお使いを頼まれたらしい。