美奈は正直者である。

包み隠さず事情を話したというのに、残念ながら信じてくれる人はいないようだ。


「院長先生、娘がおかしなことを言っているのですが、これはまだ呪いが解けていないということでしょうか?」


眉を寄せた父親は、娘の右手を放して、白い法衣の男にそう尋ねた。

薄茶色のまとめ髪に、中世ヨーロッパの貴婦人が着ていそうな上品なワンピース姿の母親も、心配そうである。

娘の左腕をさすりながら、「それとも高熱の影響で?」と、院長先生と呼ばれた男に問いかける。


「ふむ……」


渋い顔をした院長は、美奈の枕元に歩み寄り、彼女の目の奥を覗き込んだ。

「焦点は合っておるな」と呟いて、懐から短い杖のような棒を取り出すと、それで美奈の額に触れる。


「熱はない。呪いも解けている。諸々の体内バランスも整って、いたって健康体だ。ミーナ、呪いをかけられたことは覚えておるか?」


戸惑いながら首を横に振った美奈に、院長は説明する。

それによると、ミーナは三日前に、この街を訪れた旅人風の青年に見初められ、求婚されたそうだ。